電子署名・デジタル署名の法的効力及び電子契約締結における実務運用
電子取引の普及及びデジタル化の進展に伴い、電子署名及びデジタル署名は、契約締結を迅速かつ円滑に行い、利便性の向上及びコスト削減を実現する手段として、ますます普及し、幅広く利用されるようになっている。一方で、ベトナムにおいて電子契約を締結する際に電子署名及びデジタル署名を利用する場合には、情報セキュリティ及び法的側面の観点から、依然として一定のリスクが存在する。本稿では、電子署名及びデジタル署名の法的効力を中心に、ベトナムにおける電子契約の締結における電子署名及びデジタル署名の実務上の留意点について解説する。
1. デジタル署名の概念
2023年電子取引法第3条第11項および第12項の規定に基づき:
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電子署名とは、署名者を特定し、当該署名者がデータメッセージの内容に同意したことを確認するため、データメッセージに付随し、または論理的に結合された電子データの形式で作成される署名をいう。
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デジタル署名とは、秘密鍵と公開鍵からなる非対称鍵アルゴリズムを使用する電子署名であり、秘密鍵はデジタル署名に使用され、公開鍵はデジタル署名の検証に使用される。デジタル署名は、データメッセージの真正性、完全性、否認防止性を確保するものであるが、機密性を保証するものではない。
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上記の概念と要件から、デジタル署名は電子署名の一種であることが分かる。電子署名とデジタル署名の相違点、以下の4つの要素に基づいて比較することができる:
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電子署名 |
デジタル署名 |
本質 |
文字、数字、記号、音声、又はその他の形式により電子的手段を用いて作成され、データメッセージに付随し、または論理的に結合されたもの。 |
非対称鍵アルゴリズムを用いて、データメッセージを変換することにより作成されるもの。 |
機密性 |
暗号化を使用しない。 |
秘密鍵と公開鍵から構成される非対称鍵暗号方式を用いる。秘密鍵はデジタル署名の作成に使用され、公開鍵はデジタル署名の検証に使用される。 |
作成方法 |
署名画像の取り込みやオンラインサービスなどを利用して作成することができる。 |
利用者は、デジタル署名認証サービス提供事業者に利用登録を行う必要がある。 |
使用方法 |
利用者は、暗号化装置を使用せず、署名対象となる文書・資料に電子署名を付加する。 |
利用者はUSBトークンを接続し、セキュリティPINコードを入力した上で、署名が必要な箇所にデジタル署名を行う。 |
イメージ |
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以上のことから、電子署名はデジタル署名よりも適用範囲が広く、作成と利用方法も比較的容易である。しかし、デジタル署名は、署名者の識別性、完全性、機密性及び管理を満たしているため、電子署名よりも高いセキュリティを備えており、利用者の利益をより適切に保護することができる。
2. 電子署名、デジタル署名及び電子契約の法的効力
a. 2023年電子取引法第23条の規定によれば、電子署名及びデジタル署名の法的効力は以下のとおり定められている。
・電子署名は、電子形式で作成されていることのみを理由として、その法的効力を否定されない。
・安全性が確保された専用電子署名又はデジタル署名は、紙媒体の文書における当該個人の署名と同等の法的効力を有する。
これにより、2023年電子取引法は、電子署名及びデジタル署名の法的効力を認めている。これにより、デジタル署名又は安全性が確保された電子署名は、紙媒体の文書における手書き署名と同等の法的効力を有する。また、組織については、企業のデジタル署名は、法令の規定に従い、紙媒体の書類における押印及び署名と同等の法的効力を有する。
b. 2023年電子取引法第34条及び第35条の規定によれば、電子契約の締結とは、契約締結の過程における取引の全部又は一部について、データメッセージを用いて行うことをいう。
また、自動情報システムと人との間、または自動情報システム相互間のやり取りにより締結または履行される電子契約は、自動情報システムによる個々の行為や契約について、人による確認若しくは介入が行われていないことのみを理由として、その法的効力を否定されることはない。
このように、2023年電子取引法は、電子契約についてもその法的効力を認めている。これにより、当事者は、紙媒体の契約書に直接署名することなく、電子的手段により契約を締結することができる。また、電子システム又はソフトウェアを通じて自動的に成立した契約についても、法令に定める要件を満たす場合には、その法的効力が認められる。
さらに、電子取引においては、一方の当事者がデジタル署名を使用し、他方当事者が電子署名を使用して契約を締結することも認められている。
これは、2023年電子取引法第23条第1項及び第2項にの規定に基づくものであり、同条では、「電子署名は、電子署名の形式で作成されていることのみを理由として、その法的効力を否定されないこと」及び「安全性が確保された専用電子署名又はデジタル署名は、紙媒体の文書における当該個人の署名と同等の法的効力を有すること」が規定されている。
また、ベトナム法上、同一の電子取引において、当事者双方が同一種類の電子署名を使用しなければならないとの要件は設けられていない。2023年電子取引法第23条によれば、電子署名及びデジタル署名はいずれも法的効力を有し、このうち、デジタル署名又は安全性が確保された専用電子署名は、手書き署名と同等の法的効力を有する。さらに、安全性が確保された専用電子署名として認められるためには、2023年電子取引法第22条及び第25条並びに2025年政令第23/2025/NĐ-CP号第9条に定める要件を満たす必要がある。
このような契約締結方式では、当事者間における証拠力に差異が生じ得る点に留意する必要がある。紛争が生じた場合、一方当事者が使用した電子署名が、安全性が確保された専用電子署名の要件を満たしているか否かを立証することは容易ではない(情報通信省が発行する「安全性が確保された専用電子署名証明書」を取得している場合を除く)。また、電子署名を利用した当事者が、「アカウントが不正アクセスを受けた」又は「署名画像が無断で使用された」などとして契約締結の意思を否認した場合には、当該契約の有効性が争われるリスクがある。さらに、署名時点における署名者本人の同一性及びデータメッセージの完全性を情報システムによって証明できない場合には、裁判所又は仲裁機関において、当該契約が当事者の真意に基づくものではないとして、その効力が否定される可能性がある。
以上のとおり、このような混合型の契約締結方式は、法的には適法であり、当事者間において契約を拘束する効力を有するものと解される(ただし、個別法令において100%デジタル署名の使用が義務付けられている場合を除く)。しかし、訴訟又は仲裁手続の場面においては、このような方式は、当事者間における証拠力に差異を生じさせる可能性があるため、紛争が発生した場合には一定の法的リスクを伴う点に留意する必要がある。
3. 実務上の適用
電子取引は、迅速性及び利便性というメリットがある一方で、電子契約の保存及び管理については、実務上、依然として一定のリスクが存在する。特に、デジタル署名済みの電子契約を紛失し、又はそのデータを消失した場合の取扱いは、現在、電子署名及びデジタル署名を業務運営や契約締結に利用する多くの企業にとって、重要な関心事項となっている。
現行法令上、デジタル署名済みの電子契約を紛失した場合の具体的な処理方法については、明確な規定が設けられていない。
もっとも、2023年電子取引法第13条及び第14条によれば、データメッセージは、その内容の完全性が確保され、かつ、必要な場合にアクセスし、参照のために利用することができるときは、書面と同等の法的効力を有する。
また、同法第23条によれば、電子署名及びデジタル署名は、電子的な形式で作成されていることのみを理由として、その法的効力を否定されることはない。
したがって、電子契約を紛失した場合には、企業は次のような対応を講じることが考えられる。
・電子メール、クラウド、社内システム又は電子契約プラットフォーム等からデータの検索及び復元を行うこと。
・デジタル署名の利用履歴、電子証明書及びシステムログを確認し、署名者及び署名時日点を検証すること。
・デジタル署名サービス提供事業者又は電子契約プラットフォームの運営事業者提に連絡し、
データの復元又は取得について支援を求めること。
・データを復元することができない場合は、紛争リスクを軽減するため、契約を再締結し、
又は取引内容を再確認する書面を作成することが望ましい。
また、実務上、電子契約の保管については、紛争が生じた場合に取引の存在及び内容を立証できるよう、企業は次のような措置を講じることが望ましい。
・社内におけるデジタル署名の管理体制及び運用ルールを整備すること。
・電子契約を複数のシステムに保存すること。
・データの定期的なバックアップを実施すること。
・デジタル署名の利用権限を明確に設定すること。
・取引の真正性を必要に応じて確認できるよう、電子証明書の有効性を定期的に確認すること。
4. データの保存について
2023年電子取引法第36条第2項によれば、電子契約の締結及び履行に当たり、当事者は、当該電子契約に関する技術的要件、完全性及びセキュリティの確保に関する事項について合意することができる。
もっとも、電子契約の保存方法については、2023年電子取引法第13条第1項に定める要件を満たす必要がある。すなわち、①データメッセージの情報にアクセスし、参照できること、②作成、送信又は受信時の形式又は当該情報を正確に再現できる形式で保存されること、③データメッセージの作成者、送信者、受信者並びに送受信日時を特定できる方法で保存されることが求められる。
実務上、電子契約に関するデータは、一般的に以下の3層構造で保存される。
コンテンツデータ(Content Data): 契約書本文(通常はPDF形式)を企業のサーバー又はクラウド環境に保存する。
暗号・完全性データ(Cryptographic Data): ハッシュ値及び電子証明書を電子ファイルに付与し、契約締結後に内容が改ざんされていないことを保証する。
監査証跡データ(Audit Trail/Log Data): IPアドレス、操作日時、認証情報、送受信履歴などの取引記録を保存する。
なお、紛争発生時における証拠力及び客観性をより高めるため、企業は電子契約認証サービス(CeCA)の利用を検討することも有益である。
5. 結論
2023年電子取引法は、電子署名及びデジタル署名の利用に関する法的枠組みを整備し、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進及び電子取引の効率化に大きく寄与している。一方で、実務上は、情報セキュリティ、契約上の紛争、署名者の特定等に関するリスクが依然として存在する。
このため、個人及び企業は、安全かつ適法な電子取引を実現するため、認可を受けた電子契約認証サービスを優先的に利用するとともに、デジタル署名の管理及び利用に関する社内規程を整備し、署名時には電子証明書の有効性を確認することが望ましい。
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